第7章 〖 肌の記憶 〗 人気投票3位記念 城戸 慧太
桜「それは・・・困るな」
暖かい目で紡を見ながら、桜太が微笑む。
「だろ?」
桜「だな?」
この幸せに逃げられたら、オレ達は困るんだよ。
桜「・・・行こっか?」
『賛成!』
桜太とオレに腕を絡ませ、早く早くと紡が歩き出す。
「腹減りのお子様は最強だな、桜太?」
そんな言葉に、桜太が笑う。
・・・・・・あの頃は子供過ぎて。
愛され方も、愛し方も・・・分からなかった。
だからこそ、アイツの肌に縋りついて・・・人肌の温もりを手放したくなかった。
だけど、今ならわかる。
オレにはオレの・・・愛され方も、愛し方も。
今はまだ、それが小さな相手だとしても構わない。
いつまで続くかさえ、分からない未来。
そんな小さな幸せに、またも口元が緩む。
桜「なんだか楽しそうだな、慧太?」
同じ目線で桜太が覗く。
「このメンバーで、どこまで行けるんだろうなってな」
オレの言葉に桜太がフッと笑いを浮かべ、前を向く。
桜「そんなの分かってるじゃないか・・・どこまででも、だろ?」
「・・・さすがラスボス」
桜「だから、ラスボスってなんだよ」
「ラスボスは、ラスボスだ」
いつかラスボスを倒す相手が現れたとしたら、オレ達はどんな顔をするんだろう。
・・・ラスボスを倒すくらいだから、きっと強敵だな。
でも、いつかはきっと・・・
いや、今は考えたくはねぇな。
まだまだ、こんなちっぽけな幸せを、こんな小さな暖かさを・・・
噛みしめていたいから。
『また降ってきた・・・慧太にぃ、傘貸して?』
「お前1人で傘使うつもりかよ?」
『桜太にぃと一緒に入る』
「オレはよ!その傘オレが買って来たんだぞ?!」
『うわ~・・・慧太にぃ、心ちっさ!そんなんじゃモテないよ?』
「なんでそうなる・・・オレはオレを待つ美女がたくさんいるんだよ!」
じゃあ、いいじゃん?と笑って紡が傘を開く。
ホント、コイツには勝てねぇな。
真のラスボスは紡じゃねぇのか?と心で笑いながら、オレは小さな背中を見つめながら歩き出した。
「風邪引いたら紡のせいだからな」
『大丈夫、ナントカは平気らしいよ?』
「お前なぁ!」
桜「慧太!」
「またオレかよ・・・」
~ 慧太番外編 END ~