第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
慧「で?桜太の話は、梓ちゃんの事だろ?なんか深刻な事でもあったのか?」
「あぁ、そうなんだ・・・ちょっと、1人で抱えるのが辛いなって・・・」
慧「ま、紡の事は大丈夫だ。灰皿取りに行ったついでに、ちょっくら無理難題押し付けて来たから時間は稼げる」
「無理難題って?」
慧「ん?まぁ、桜太はいろいろお疲れモードだからサラダとデザートも付けて、野菜ジュースも絞っとけって押し付けてきた」
「またそんな事を・・・」
だけど、慧太と話す時間が増えた事はありがたい。
ゴメンね紡。
ちゃんと責任持って残さず食べるからね。
慧「そんで?お前は何を抱え込んで辛気クセェ顔してんだよ」
・・・辛気臭いって。
「今日、梓からいろいろ話を聞いて、その内容はさっき話したけど・・・移植のきっかけは、パートナーからの言葉だったらしいんだ。子供が産めない病気の子宮なら、誰かと取り替えればいい・・・って」
慧「随分ひでぇ旦那だな」
フゥ~と煙を吐き出しながら、慧太が遠くを見た。
「それで、それを受け入れたのは自分だけど・・・その、まぁ・・・自分の体であるうちに・・・」
慧「でも、桜太はそうしなかったんだろ?それを今頃になって後悔してんのか?やっぱり頂いときゃよかったな・・・とか」
「・・・言い方。後悔なんてしてないよ。現実を受け入れて、子供を・・・パートナーの子供を産みたいと思ったから、その方法を選んだのに。はい、そうですかって、できる訳ないだろ?だけど、なぜ・・・俺だったんだろう・・・って」
実際、俺と別れた後に少し経ってから誰かと付き合い出した事は・・・知ってる。
なのに、なぜ、俺に連絡をして来たのだろう。
慧「それは・・・だな、桜太。この先どれだけ時間がかかったとしても、自分で答えを見つけ出した方がいい」
「慧太には、答えが分かってるような言い方だな?」
慧「さぁな?ちっとは心が軽くなったか?」
慧太らしくニヤリとしながら聞かれ、俺も同じ様に、さぁな?と答えた。
「慧太・・・ありがとう」
それだけ言って、また、煙草に火をつける。
慧「ハイハイ、そりゃどーも。あぁ、そうだ。桜太・・・オレからひとつだけ忠告しておくが・・・」
慧太から、俺に忠告?
「聞くの怖いけど・・・なに?」