第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
慧「はい、捕獲~!」
慧太は暴れる紡を小脇に抱えて階段を降りて来た。
慧「ほらよ。いい仕事したなぁ、オレ!」
「慧太・・・ありがとうな。それから紡?」
慧太から引き渡された小さな肩を抱きしめ、顔を見る。
「これから大事な話をするから、慧太と一緒に聞いて欲しい。いいね?」
紡の返事を待つこともなく、一緒にリビングへと入る。
何か入れようか?と、気を使う慧太に、とりあえず座ってくれと言って食事の時と同じ位置に3人で座った。
「紡?今日、俺が会っていたのはね・・・梓なんだよ」
『梓・・・ちゃん?・・・慧太にぃは、知ってた・・・の?』
慧「まぁな。昼間、桜太から連絡貰ってたし」
「梓から連絡貰ったのは昼間だったし、紡は授業中だろうと思って、比較的自由人の慧太に連絡したんだよ」
その後は、細かい内容は紡には伏せて全てを話した。
「・・・だから、俺は疑われる様な事は何もしてないよ」
『・・・分かった』
カタン・・・と、音を鳴らし紡が椅子から立ち上がり、俯いたままキッチンへと歩いて行った。
「紡?」
後を追おうと俺も立ち上がろうすると、慧太に手を捕まれ、それを阻まれた。
慧「そっとしとけ。紡がお前と同じくらい大好きで懐いてた、梓ちゃんの病気の話を聞かされたんだ。桜太はいまは何もしない方がいいだろ」
「そう、だね・・・慧太。ちょっと・・・一服外出ない?」
紡がいる手前、まだ話してない事があるとは言えず、煙草を理由にウッドデッキへ誘う。
慧太も含みを感じ取ったのか、灰皿取って来ると言ってキッチンへと歩いて行った。
先に外に出て夜風に吹かれながら、星空を見上げる。
梓はあの部屋で、同じ空を見ているだろうか・・・
もし、そうだとしたら。
君は何を思って、星空を見ているの?
そして、誰を想って・・・
慧「なぁに泣いてんだよ?」
灰皿と一緒に煙草を渡され、泣いてないからと言葉を返す。
慧「泣いてんだろ、心が。何となく分かるんだよ、オレは特に」
フフンっと鼻で笑い、慧太が隣に立つ。
こんな時、つくづく双子って・・・と思う。