第7章 〖 肌の記憶 〗 人気投票3位記念 城戸 慧太
「もう!桜太も何とか言ってよ!桜太と慧太君からしたら、世の中みんなチビ助なんだからね!・・・えいっ!2人とも捕まえちゃうから!」
クスクスと笑いながら、梓ちゃんがオレと桜太の腕に自分の腕を絡める。
「離せっての!」
「ベーっだ!」
「可愛くねぇオンナ!」
「いいも~ん!慧太君が可愛くないって言っても、桜太は可愛いって言ってくれるから!」
かぁぁぁぁぁっ!
マジでめんどくせぇー!
・・・でも、まぁ、よ?
こんなのもたまには、年相応で楽しいんだオレは。
例えそれが、桜太の彼女だとしても・・・だ。
3人で腕を絡ませながら、どこの店に行こうか?なんてアチコチ意見を出し合う。
「ね?紡ちゃんてさ、パンダ好きじゃない?だから私、パンダのぬいぐるみとか考えてたんだけど、どうかな?」
桜「そうだね、きっと喜ぶよ」
あ~、確かに紡は・・・何かとパンダを選んでるよな。
カーテンの柄とか、枕カバーとか。
オレからしたら、あんな部屋にいたら落ち着かねぇよ・・・
女ってつくづく、わかんねぇな・・・
桜「慧太はどうする?何か考えてた?」
「あ?オレ?そんなん先に決まってたらリサーチなんか・・・」
今のは・・・
振り返り、すれ違った相手の後ろ姿を確認する。
今のは確かに・・・深月、だったよな?
一緒にいたヤツは誰だ?
アイツの旦那じゃなかったぞ。
深月の部屋に行く度に、何度も見た結婚式の写真・・・
その相手とは、全く違うヤツ・・・だった。
「慧太君?どうかした?」
「悪ぃ、急用が出来た。買い物は2人で行ってくれ・・・じゃあな」
桜「あ、おい!慧太?!」
アイツ、さっきまでオレといたのに・・・なんで・・・
物足りなかったのか?
それとも、ガキの欲果たしに付き合ってるだけなのか?
クソッ!・・・なんで、オレはこんなに焦ってんだよ!
深月の姿を探しながら、オレは早足で人混みをすり抜ける。
・・・いた!
その姿を追って、更に距離を詰める。
やっぱり深月だ!
「おいっ!待ってくれ!」
後ろから肩を掴み、声をかけた。
振り返った瞳は、オレを見て明らかに動揺した。
これは・・・ゲームオーバー・・・だな。
「あの・・・な、何か?」