第7章 〖 肌の記憶 〗 人気投票3位記念 城戸 慧太
誰かと違う、オレ自身になりたい。
桜太に似てる、じゃなく。
オレ、一個人に。
ま、生憎と手先は器用だし?
紡の髪だって、ちょっと前までは、結ってやってたからな。
今は・・・深月と付き合い出してからは・・・
1度も、結ってやれねぇケド。
泥まみれの手じゃ、結ってやれねぇよ。
ショーウィンドウに映る自分の姿に、思わず足を止める。
今のオレは、どこもかしこも汚れちまって・・・見るも無残だ。
キレイな体と、キレイな心になったら・・・
また、結ってやれる。
ー 慧太・・・? ー
やり切れないため息をついた所で、背後から声を掛けられた。
「なんだ、桜太かよ」
桜「なんだじゃないだろ?何してんだよ、こんな所で」
はいはい、それはコッチのセリフだってーの。
「べっつにぃ?オレはプラプラと風の吹くままってやつ?自由人慧太サマだからよ」
軽い口調で言えば、桜太はあからさまに眉を顰めた。
「んで?そっちは?桜太こそ、こんな時間に何してんだよ」
桜「俺は別に、紡の誕生日が近いからプレゼントのリサーチを・・・」
プレゼントのリサーチ・・・か。
「奇遇だな、オレもだ。一緒に行こうぜ?」
桜「それは構わないけど」
「んじゃ、行くか」
桜太の肩をポンッと叩き、一緒に歩き出す。
おもちゃ売り場を覗いては周りからチラチラと見られ、子供服売り場へ行けば・・・それはそれでチラチラと見られる。
ま、その理由はだいたい想像つくけどよ。
それにしても、だ。
「おい、桜太。お前、全然気にならねぇのか?」
桜「何が?」
「何がって・・・さっきから行く場所でオレ達、見られ放題なんだけどよ?」
オレが言うと、桜太も周りをチラッと見て苦笑を見せた。
桜「そう言われると、だね。多分、俺達が2人でこんな所を見て回ってるから・・・怪しまれてるのかもね」
だよな。
こんなタッパが180もあるような男が2人連れで、しかも高校生ってモロバレのヤツが・・・
いかにも女の子が着る服やら、ヌイグルミやらを見て歩いてんだからよ。
そっち系の趣味ですか?って聞かれてもおかしくねぇよ。
桜「このままじゃ、何となく買い物しづらいよなぁ・・・」
「出直すか?」
桜「出直したところで、また同じだろ?・・・そうだ・・・」