第5章 〖 繋いだ指先の行方 〗 人気投票2位記念 岩泉 一
でも・・・
「紡?お前って小さい頃から、小さかったか?」
『小さかったか?って、それ凄い気にしてるのにひどいー!』
及「そうだよ岩ちゃん!紡ちゃん、ヨシヨシ、オレが慰めてあげるよ~」
・・・おい。
「及川テメェ!どさくさに紛れて紡に抱きついてんじゃねぇ!離れろ!」
紡の腕を引っ張って、背中に隠す。
・・・この感じ、前にも?
ー あっ!ママだ!ママ~!こっちだよ~!ー
急に立ち上がり、小さなヤツが誰かに手を振った。
俺達の方に歩いてくる母親に向けて、3人で軽く頭を下げた。
ー ママ~!あのね!つーちゃんと、とーるくんと、はっくんが一緒に遊んでくれたの!見て~、大きいお山はねぇ、はっくんが作ってくれたよ~ ー
興奮気味に話す子供を、母親は良かったわねぇと微笑みながら抱き上げた。
何度も礼を言われて、俺達は後ろ姿を見送った。
振り返っては手を振る子供の姿が・・・あの日と、重なる。
『暗くなる前にママが来て良かったですね?』
「あぁ、そうだな」
『思い出すなぁ。私も小さい頃、よくあんな風に手を繋いで公園から帰ったんです』
「1人で、遊んでたのか?」
『いえ、1人の時もありましたけど。時々ボール遊びしてたお兄ちゃん達が一緒に遊んでくれました。どれくらいの年の差があったのか分からないけど、きっと今頃は素敵な大人になってるかな?って』
・・・まさか、な?
「紡、お前の兄貴って・・・名前なんて言うんだ?」
つい、そんな事を聞いてしまう。
『うちの兄ですか?・・・桜太と、慧太・・・ですけど、どうかしました?』
桜太と・・・慧太?
確かあの頃の兄ちゃん達を、俺と及川は・・・
おぅちゃんと、けぃちゃん・・・って、呼んでなかったか?
それに加えて、つーちゃん・・・?
ははっ・・・
いや・・・まさか、な?
「俺達も帰るか?」
『そうですね・・・なんか名残惜しい感じもしますけど・・・』
今さっきまで遊んでた場所を振り返り、紡が瞬きを繰り返した。
「ほら、置いてくぞ?」
紡に向けて、まっすぐ手を差し出す。
『置いてかないで下さい?』
少し照れながら紡が手を重ねて来る。
及「いいなぁ岩ちゃん。オレも~!」