第5章 〖 繋いだ指先の行方 〗 人気投票2位記念 岩泉 一
「なんでだよ!お前は1人でヒョロヒョロ歩いてろ!」
ちゃっかり紡と手を繋ごうとする及川を蹴散らし、紡から遠ざける。
及「岩ちゃんズールーイー!!」
「ダメなもんなダメだ!」
そんな俺達のやり取りを、紡はクスクスと笑っていた。
及「えいっ、隙ありぃ!」
『わっ!』
ここぞとばかりに紡の手を握る及川に、俺はケリを飛ばす。
「テメェ!及川!離しやがれ!!」
及「イヤだね~っだ!繋いだモン勝ち~!」
「ガキかテメェはっ!!」
及「ガキでもいいも~ん!」
俺と及川との間で振り回される紡が、いい加減にしてください!と一喝を放つ。
『でも・・・見て下さい私達の影!ハジメ先輩も及川先輩もすっごく背が高いから、真ん中の私は捕らわれた宇宙人みたい・・・』
紡の言葉に俺達は3人並んだ影を眺める。
及「宇宙人?・・・ホントだ」
「違ぇねぇ・・・」
『2人ともひどい・・・』
「お前が最初に言ったんだろうが!」
『でも~!』
言い合いながら、3人で顔を合わせて腹がよじれるほど・・・いつまでも笑った。
そんな俺達を、赤く染まる空が・・・ゆっくりと、ゆっくりと照らしていた。
子供の頃の小さな指先は、もしかしたら・・・
今また、俺の手の中にあるのかも・・・知れねぇな?
「チビ子・・・」
小さく呟いて、俺は紡の手をしっかりと繋ぎ直した。