第5章 〖 繋いだ指先の行方 〗 人気投票2位記念 岩泉 一
け「おいオッサン!テメェうちの妹たちに何してやがる!!アァ?!」
・・・おぅちゃんにソックリだけど、やっぱ、おぅちゃんじゃ、ねぇな。
『けぃちゃん!パパは?!このオジサンがパパがケガして大変だから、病院行こうって!』
け「はぁ?父さんなら昨日から東京行ってんだろうが、バカタレ!」
ー クソッ! ー
一瞬の隙をついて、オッサンが逃げ出した。
「逃げた?!捕まえねぇと!」
け「おい!ソッチ頼むぞ!」
抱き抱えていたチビ子を兄ちゃんに押し付け追いかけようとしたら、頭をガッツリ掴まれて止められた。
け「待て待て!お子様の出番はここまでだ。ほら見てみろ?お前の好きなおぅちゃんが、既にとっ捕まえてるからよ」
ニヤニヤ笑いを浮かべながら指をさすのを見て、俺もその先を見た。
「おぅ・・・ちゃん?」
顔色ひとつ変えずに、オッサンを地面に押さえつけてる・・・おぅちゃんがいた。
お「残念ですが、タイムリミットですよ?・・・誘拐犯のオジサン?」
子供の俺から見ても背中がゾクゾクする顔で、おぅちゃんがオジサンを見ていた。
及「おぅちゃん!お巡りさん連れてきたよ!!」
いつの間にか姿が見えなかった及川が、交番のお巡りさん2人と駆け寄ってくる。
おぅちゃんは駆け付けたお巡りさんにオジサンを引渡して、それからすぐに来たパトカーに乗せられて全員警察署まで連れて行かれた。
順番に話を聞かれたり、家の電話番号とかいろいろ聞かれて、みんながいる部屋に戻される。
警察から電話とかされたら、母ちゃんにスゲー怒られるよな・・・
そう思っていたのは、及川も同じで。
2人でしょぼくれていた。
け「おいおい、そんな顔してんな。お前らはオレ達の姫さんを守った、スーパーヒーローなんだぜ?」
俺達の頭にポンッと手を乗せ、けぃちゃんが笑った。
「スーパーヒーロー・・・?でも、母ちゃんに怒られるヒーローなんか、カッコ悪いよ」
及「うん・・・カッコ悪い・・・」
お「心配しなくて大丈夫だよ。2人は怒られたりしない。つーちゃんを守ってくれたように、俺達が守るから」
ね?と言いながら、おぅちゃんが優しく笑った。
その時、思ったんだ。
俺、大人になったら・・・
おぅちゃんとか、けぃちゃんみたいに優しくて、強くて、カッコイイ大人になりたい!って。