第8章 山本武
「優美、私達も行こうよ!」
結愛に言われて私達も向かう。屋上ではクラスメイトが武に声をかけていた。
「オイオイ、冗談きついぜ山本ー!」
「そりゃやりすぎだって」
フェンスを越えて向こう側にいる武。
「へへっ、わりーけどそーでもねーんだ。野球の神さんにみすてられたら、オレにはなーんにものこってないんでね」
どうやら武は本気みたいだ。私はハラハラしながら見守る。
「まさか...」
「本気?!!」
「フェンスがさびて今にも割れそうなのに!」
クラスメイトもざわっと驚く。女子の中には泣いている子もいる。ツナがまだ来ないので私が入り口を見ると、人影が見えたので私は近づいた。
『ツナ!』
「優美!!」
頭を抱えて、青ざめているツナがそこにはいた。
『ツナ、武のこと聞いたときおかしかったよね。何かあったの?』
私がそう尋ねると、戸惑いながら昨日あったことを話出したツナ。
『......ツナ、ツナが正直に自分の気持ちを言えば武の心に響くものがあると思う。だから今度はうわべだけの言葉じゃなくてツナ自身の言葉でちゃんと答えてほしい...。じゃあ、私は行くね』
私はそれだけ言い残して結愛のもとへと帰ってきた。少し時間が経過してから、なぜかツナが走って武とクラスメイトのみんなの間に出てきた。
「え...あ...。どっ...どーしよーっ」
サーと青ざめるツナ。それを京子も見つめている。
「止めにきたならムダだぜ。お前ならオレの気持ちがわかるはずだ」
「え?」
ツナに向かって武が話しかける。それにツナは驚く。
「ダメツナって呼ばれてるおまえなら。何やっても上手くいかなくて死んじまったほーがマシだって気持ちわかるだろ?」
「えっ...あの...っ」
武の言葉にツナは戸惑うが、自分の気持ちを言葉にする。
「いや...山本とオレはちがうから...」
ツナの言葉が今の武には気に障ったようだ。
「さすが最近活躍めざましいツナ様だぜ。オレとは違って優等生なわけだ」
「ち、ちっ、ちがうんだ!ダメな奴だからだよ!!」
「?!」
ツナは武の言葉を焦って否定する。それに武は驚いたようだ。