第8章 山本武
「オレ、山本みたいに何かに一生懸命打ちこんだことないんだ...。'努力'とか調子のいいこと言ったけど、本当は何もしてないんだ...昨日のはウソだったんだ...ごめん!」
そう言ってツナは頭を下げる。
「だからオレは山本とちがって死ぬほどくやしいとか、挫折して死にたいとか...そんなすごいこと思ったことなくて...。むしろ死ぬ時になって後悔しちまうような情けない奴なんだ......。どーせ死ぬんだったら、死ぬ気になってやっておけばよかったって。こんなことで死ぬのもったいないなって。だからお前の気持ちはわからない...ごめん...じゃ!」
ツナはだあっと私達のほうに向かって走り出した。しかし何か思うところがあったのか武がツナの服をぎゅっと掴んで引き止める。
「まてよ、ツナ」
しかし、それにズルゥと足を滑らせたツナはそのままフェンスに当たる。そしてフェンスが壊れやすくなっていたため、フェンスを突き破り武と一緒にツナは落ちてしまう。
「うわぁぁっ」
「ぎゃあぁあ」
叫び声を上げて落ちていくツナと武。それを見たクラスメイト達も悲鳴をあげる。私は急いで下を見た。
「空中・復活!!!死ぬ気で山本を助ける!!!」
リボーンがどこからか打った弾がツナに当たり、ツナは死ぬ気モードになる。
「ツナ!」
山本が叫ぶ。いつの間にか私の両隣に来た京子と結愛も心配そうに見つめている。ツナは武を横抱きに受け止めた。
「くそっ、止まらない」
しかし勢いはすごいので止まらない。そのためツナは自分が下になった。どこからかまた何か弾を打たれたのか、ツナのつむじからスプリングが出て跳ねる。それによって2人は助かった。
「うそーっ」
「ぶ...無事だぞ!!」
「こんなことありえんだろ」
2人を見ていたクラスメイト達は驚きを露にする。
「山本のジョークだったんじゃないの?ワイヤとかつかって...」
「そっかっ」
1人の女子の言葉にみんなが納得したように頷く。
「なーんだ!オレ真剣に心配しちゃったよ〜〜〜」
「やっぱりツナってヘンタイだよなーーー」
「帰ろ帰ろ」
クラスメイトはジョークだと思ったのか、ゾロゾロとみんな引き返していった。
「優美、行こ?」
『ちょっと、先行ってて!』
私は結愛にそう告げて走り出す。