第8章 山本武
今は体育の時間だ。女子はテニスをしていたのだが、先生が席を外していて今は自由時間だ。そのためグラウンドで野球をやっている男子の方に行っている人が多い。
「優美、私達も見に行く?」
『うん、行こうか』
ツナはぽつーんと真ん中に取り残されてしまっている。どちらのチームもツナを入れたくないみたいだ。今日は隼人はいない。ダイナマイトを仕入れに行ったみたいだとツナから聞いた。
「いーんじゃねーの?こっち入れば」
1年にしてもう野球部レギュラーでクラスのみんなから信頼のあつい武がそう言った。
「まじ言ってんの山本〜〜〜っ。なにもわざわざあんな負け男」
「ケチケチすんなよ、オレが打たせなきゃいーんだろ?」
「山本がそう言うんなら、まぁいっか」
他のクラスメイトがブーブー言うなか武がそう言ったことでチームに入れたツナだった。
『さすが、武』
「本当だね」
そこから大活躍の武。武と同じチームになったみんなも褒め称え、女子からは黄色い声があがる。それをツナは羨ましそうに見ていた。
「山本、奴の運動能力と人望はファミリーに必要だな」
まさかリボーンが遠くから見ていたとは気づくことはなかったのだった。
「優美、そろそろ戻ろう!」
『わかった、今行く!』
しばらく試合を見ていたが、結愛に言われて私達は戻ることにした。だから結局負けたことも、ツナが1人でトンボがけをすることになったことも、何も知ることはなかった。
次の日、結愛と自分の席に座って話しているとクラスメイトの男子が慌てたようにみんなに呼び掛ける。
「大変だー!!!山本が屋上から飛び降りようとしてる!!!」
『え?!』
その男子の声に私は驚いた。
「山本ってうちのクラスの?」
「あいつにかぎってありえねーだろ!」
「言っていい冗談と悪い冗談があるわ」
しかし、クラスメイトの誰もがそれを信じようとはしない。
「あいつ昨日1人居残って野球の練習してて、ムチャしてうでを骨折しちまったらしいんだ」
その言葉を聞いたツナの顔色が悪くなる。
「とにかく屋上に行こうぜ!」
声を合図にクラスメイトみんながダダダと走り出した。
「ツナ君、いこっ!」
なぜか教室に残るツナに京子が呼び掛ける。だが、ツナはこう答えた。
「あ...うん!ト、トイレにいったらいくよ...」