第5章 道場
結愛に聞いた話によると持田センパイは不正をするんではないかということらしい。審判は持田センパイの息がかかっていて旗をあげないのではないかと。そんなことを話していたら、どこからか声が聞こえてくる。
「ぅぉぉおおおおお!」
そしてドアがダンっと開かれた。
「いざ!勝負!!!」
「なっ」
ツナが現れ驚いた様子の持田センパイ。そこから野次馬のみんながざわざわしだす。それもそのはず、ツナはまたしてもパンツ一丁なのだなら。
「うおっ!」
「ヘンタイだ!」
「キャー、やだーっ」
現れたツナに、剣道部の部員が二人がかりで重そうに持っている防具を渡そうとする。
「おまえの防具はコレ...」
しかしそれを無視してツナは突っ込んでいく。
「ぅぉおぉぉおぉお!」
「な!」
「あのまま!」
そんなツナを見た持田センパイは吹き出して笑い始めた。
「ぶっ、ギャハハハ!裸で向かってくるとはブァカの極みだな!!!手かげんでもすると思ったか!!散れ!!カスが!!!」
持田センパイは竹刀を振り上げ、バチィッとすごい音がなりツナの顔面に当たった。しかし
「だあ!!」
竹刀ごとぐっと押し返したツナは、そのまま持田センパイに頭突きをくらわせた。持田センパイはどたあっと倒れる。
「ふんっ」
その掛け声と共に飛び上がったツナは、持田センパイの上に馬乗りになる。
「マウントポジション?!」
「何をする気だ?!!」
サッと片手をあげたツナ。
「手刀だっ」
「面を打つ気だ」
「うぉぉお」
様々な憶測が飛び交う中、そこにはベリっと何かを剥がす音とギャッという悲鳴が響き渡る。
「?!」
「......?!」
みんな驚きの表情を見せて、道場は静まり返る。
「100本!!!とったーーっ」
ツナの手にはごっそりと抜けた髪の毛があった。そしてどっとみんなが笑い出す。
「考えたな、ツナのやつ」
「確かに何を一本取るかは言ってなかったもんな」
ツナは取った髪の毛を審判に見せるが、悲鳴をあげて何も言わない。
「ちっくしょーっ」
そっからのツナは別人みたいだった。ブチブチと持田センパイの髪の毛をむしっていったのだ。ついに持田センパイの頭がツルリと光ったところで、ツナが審判にむしった髪の毛をみせる。
「全部本」
「赤!」
こうしてツナの方の旗が上がった。