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Luce e Concerto di neve【復活】

第10章 Anello


それっきり口を噤んでしまう。舞姫は何が言いたいのか。このガキから何を聞き出そうとしているのか。子供好きとは言ってたが子供には厳し過ぎる言葉を並べる。
今まで見ていて分かるのは舞姫は金稼ぎで医者をしてる訳では無い。出会った当初に救った数名の命からお金を取ろうとしてなかった。



『坊やは何故追われていたの?』

「俺達…小さい頃から親が居なくて…弟は生まれつき身体が弱くて…兄ちゃんはずっと俺達の為に働いてくれてたんだけど…半年前に身体を壊してから満足に動けなくて…」



その後このガキはギャング達と出会いハッカーとしての技術を買われ雇われていたのだが、支払われる金額はとても少く兄や弟の入院費が追い付かなくハッキングの技術を利用して金を横領して兄弟の治療費に回したが、それがバレて追われる事になったそうだ。



『お兄さんもギャング達と関わりがあったんじゃない?』

「!」「えっ…」

『多分、坊やと同じ事をしたんじゃないかしら?それがバレて化学毒を盛られて身体が悪くなったのね』



臓器の所々に綻びがあるわ、と続ける。



「だとしたら解毒薬で何とかなるだろう」

『特殊な化学毒みたいだから多分普通の医師や薬剤師じゃ治療も解毒も出来ない』

「じゃあ兄ちゃんは…」

『大丈夫』

「「!」」

『アタシが診てるんだもの。必ず助ける』



といつもの優しい笑顔を餓鬼に向けた。





※※※





『ふぅ…これでもう大丈夫』



と白衣を着てた女は水道で真っ赤に染った手を洗う。ファスナー式のスカートを腰に巻き付けてファスナーを閉めると血塗れのワイシャツの上にジャケットと白衣を羽織る。



『これはあげるから病院はもっと大きな所に移動しなさい』



そう言って手渡された少し大きめの巾着の中にはお金がぎっしり。



「ゔぉお゙い!舞姫!その金は…」

『この小さな病院のお金。患者ほっぽり出して避難する様な病院は駄目よねぇ』

「悪人なのか善良人なのか分からねぇ奴だな」

『敵と見なした人以外には善良人のつもりだけど?』



怖そうな銀髪の人の顔を覗き込む様に少し屈むと銀髪の男はふい、と顔を逸らす。



『後は弟君だけど…お兄さんと一緒に施設の充実した大きな病院へ行けば治るから。アタシが手術で直ぐ治すのも可だけど…』
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