Luce e Concerto di neve【復活】
第5章 Nascondiglio
ふらりと急に現れたアタシを訳も聞かず住まわせてくれて色々お世話をしてくれた優しい村人達。この人達のおかげでアタシは少しだけ自分を取り戻す事が出来た。
「少し寂しくなるけど本当に良かったよ」
『有難う、おばあさん』
※※※
ギィ…と壊れそうな音を立てる扉から家の中に入れば、こんな所で生活出来るのかってくらいに狭く小さい家。鼻腔を擽るのは薬品の匂いだけでなく女特有の甘い香り。室内にはシングルのベットと小さな机のみ。その机の上には古びた写真が写真立てに飾られ、薬草を煎じる鉢が置いてあるだけだった。
「本当に隠れ家だな…よくこんな所で生活出来るもんだぜ」
『住めば都ってやつよ…よし、荷物はこれだけ』
と段ボールを三つベットの上に置く。
『あ、コレは忘れちゃ駄目ね』
机の上にあった写真立てを手に取ると段ボールの中に仕舞ってベットのすぐ側に立て掛けてある長物を抱える。
「…それは?」
『アタシの愛用武器。ずっとアタシを守ってくれてた相棒よ』
剣…否、刀か………にしても等身がとても長い。とても暗殺向きの武器とは思えない。隠せる大きさでも無いし持ち運びも面倒そうだ。気になるのはそれだけじゃない。先程、段ボールに仕舞った写真だ。一瞬しか見てないがとても古びたモノだったし写っていたのは…二人の子供だった。
『写真、気になる?』
「ん゙なっ!?」
『小さい頃のアタシ。隣に居るのは妹。可愛いでしょ?』
「妹…?妹は今…」
何処に居る?と聞こうとして口を噤む。もしかしたら、もうこの世に居ないのかも知れない。
『妹は多分元気に生きてる、と思う。もう10年以上会ってないから』
「そうか…悪い…」
『気にしないで。アタシ自身が選んだ事だから』
そう言う舞姫は泣きそうな顔で微笑んだ。
※※※
「この家は空けておくから、いつでも遊びにおいで」
『うん』
「あ、そうそう!素敵な恋人が出来たらちゃんと紹介するんだよ」
『っ!?ちょ!?ミレイユおばあさん!?』
「お兄さん、この子の事宜しくね。とっても優しくて良い子なんだよ」
「…あ゙ぁ」
って。
『そうじゃないでしょ、そうじゃ』
「じゃあ何だってんだァ」
帰りの車の中で盛大に溜息を吐く。