Luce e Concerto di neve【復活】
第3章 Farfalla ammaliante
「はあ………頭の悪い人に効く鎮痛剤ですか…?」
「無いのか?」
『馬鹿に効く薬は無いと思いますが?』
笑いを耐える様に口元に手を当て震えた声で女が話し掛けてきた。凛とした低めの声は聴き心地が良い。見た感じは普通の女。だけど雰囲気はこちら側の人間。多分同じこちら側の人間でも相当の手練じゃないと気付かないくらいのレベルで一般人に馴染んでいる。
-ジジ…-
「!」
耳に付けてた無線から音が聞こえる。
「やっと繋がった!スっ君大変よ!北アメリカとメキシコのマフィアが抗争を始めたわ!」
「それに便乗してイタリアと中国も動いてる」
-ドォン-
一同「!?」
『っ!?』
轟く爆音。揺れる建物。多くの商品が雪崩を起こして建物の外では銃声も聞こえる。パニックになる店内を沈めたのは女の声。
『皆落ち着いて。きっと小競り合いよ。一般人を巻き込む様な事はしないハズ』
一同「…」
『でも此処は病院だから怪我人が運ばれて来るハズ。先生方は怪我人が運ばれて来るのを想定して準備を。一般民の方々は絶対に外に出ないで』
テキパキと指示を出す女は買い物の紙袋をひっくり返すと奥底から出て来たジャケットと白衣を羽織る。
-バァン-
「先生助けて下さい!!!妻が流れ弾に当たって…」
「頸動脈を掠ってる…我々の技術じゃコレは…」
『アタシがやる。清潔な器具と布の用意を』
一刻を争うのか専用の部屋には運ばずその場で処置を始める。医学に精通してない俺でも流石に分かる。あの状態じゃ間違い無く助からない。しかし女は素早く色々と縫い合わせ、あっという間に手術を終える。明らかに死ぬと分かってる者を救う名医。そんなのは極わずかしか居ない。
「ちょっと聞いてるの!?」
「あぁ…聞いてる」
「どうす…「胡蝶探しは中止だ」…え?」
「多分…今…胡蝶は俺の目の前に居る」
「は?」「え?」 「あ?」
※※※
『ふぅ…』
どのくらいの時間が経過しただろうか?外ではまだ銃声も聞こえる。此処に運ばれたのは三人。一人十分から十五分の手術時間を要したとしても三十分そこそこしか経過してないだろうと思う。
『一命は取り留めましたが、まだ油断は出来ません。先生、適切な看病を御願い致します』