第10章 僅かな変化~身体と、時と、心~
《家康視点》
ドカドカと廊下を歩く足音、確実にこの部屋に近づいている。
「家康はおるか!?」
(ほら来た。)
信長が家康の部屋の襖を勢い良く開ける。
(多分、今日の夜なら信長様とゆっくり出来るんじゃないって言ったから、あのこと言ったんだろうね。)
「何ですか。いきなり人の部屋の襖を勢い良く開けないでください。」
「歌恋が、歌恋が子を宿したというのは誠か?」
(ほらね。)
「そう見たいですね。」
「何故、俺に言わなかった。」
(あっ、そっち?)
「別に。歌恋が黙ってて欲しいって言うから言わなかっただけですけど。」
(というか、距離が近いし。)
「それで、歌恋が子がお腹にいる間は身体をもとめることは出来ないのか!」
「どうなんだ?!家康。」
(あぁーめんどくさい。でも、ダメって言ってもどうせ、歌恋を求めるんでしょ。)
「まだ安定してないから激しいのはダメですよ?」
信長がニヤリと笑う。
「今一番大事な時期だからそれやって、流れたら元も子もないですからね。」
「わかっておる。それが聞けたからもうよい。」
「もう良いって・・・人の部屋に勝手入ってきたのは信長様だし。」
(まぁあれだけ信長様に抱かれてたらそりゃ子どものひとりや二人出来ないのがおかしいし。)
用があり、天守に行くと歌恋の艶ぽい声が聞こえきて、そそくさと退散したこともある。
歌恋を見ていれば信長様に抱かれた次の日は雰囲気が違うからすぐ分かった。