第10章 僅かな変化~身体と、時と、心~
その日の夜は織田軍の領土の大名の別荘で休む事になった。
そして、戦に勝った宴が盛大に行われた。
元々お酒はあまり好きでは無かったからお酒を勧められることはないからいいが、はっきり言って食欲がない。
昼に食べたおむすびも結局戻してしまった・・・。
(どうしよう・・・。)
「とりあえずお酌にまわって、ある程度時間経ったら疲れたと言って部屋に戻ろう・・・。」
「ん?なんだ?歌恋は食べないのか?」
政宗がお膳に手をつけてないのに気づき声を掛けてきた。
「えっ?うん・・・、ちょっとお昼のおむすびが残っててあんまりすいてないだけだよ…。」
「それよりお前、少し雰囲気が変わったんじゃないか?」
光秀が急に振ってきた。
「そ、そうですか?きっとこの環境に慣れただけですよ?」
「そうか・・・、だがなんとなく女の雰囲気が変わったような・・・」
光秀と政宗が迫り後ずさりするも、すっと立ち上がり
「わ、私ちょっと疲れたので先に失礼しますね。」
そう言って部屋を後にした。
「危なかった…。」
部屋に戻ると気を落ち着かせる為にお針子の仕事をして信長の戻りを待った。
「今夜こそ信長様にちゃんと報告しよう・・・」
家康は時を見ては歌恋の様子を見に来てくれ、妊婦にいいという薬草を煎じてくれたりと気を使ってくれた。
すると襖が開く音がし、信長が入ってきた。
「信長様・・・、おかえりなさい。」
「なんだ、先に寝たのでは無かったのか…。」
そう言って歌恋を抱きしめた。
「信長様・・・?」
「お前に触れることができなかったこの二月。俺はこんなにも地獄に近い事かと思った。」
「はい。」
「お前を側に置いたことを一瞬悔やみそうになったが、お前がいてくれたからこそこの二月を乗り越えることが出来た。」
「はい・・・。」
信長の大きな背中に手を回して、子どもをなだめるようにひたすら話しを聞いていた。