第10章 僅かな変化~身体と、時と、心~
「多分、それ懐妊してるよ。」
「えっ?嘘でしょ・・・?」
歌恋は驚き言葉が出なかった。
「安土に帰ってからじゃないとハッキリとは言えないけどね。」
「でも、ほぼ確定だと思うよ。」
言葉を続ける家康にしがみつき懇願するように話す。
「あの・・・、家康、」
「何。」
「信長様にはまだ言わないで欲しいの。」
愛する人の子どもが出来たと言うのに出てきた言葉は、思いもかけない言葉だった。
「なんで。」
「信長様にはこの戦いが終わるまでは、戦いのことだけに集中して欲しいの。」
家康はそれを聞いて
「分かった。でも、無理はしない事。体調悪い時は無理せず身体を休める事。」
「これだけは俺からも約束させて。あんたに、何かあったら信長様に斬られるのこっちだし・・・」
「ありがとう…家康。」
「もし、本当だとしたら予定はどれ位かな?」
「恐らくだけど春以降だと思うよ。」
「そっか・・・、じゃぁ信長様の誕生日とどっちが先かな?ふふっ」
さっきまで、顔色も悪く、起き上がっているのもやっとだった歌恋が、急に母の顔になり、家康は何とも言えない感情になっていた。