第10章 僅かな変化~身体と、時と、心~
「花恋は身体拭く手ぬぐいを濡らしてきてくれる?」
「分かった!」
そう言って意気揚々と水を汲みに行こうと、
救護所の出入口を出た瞬間・・・
「うっ・・・」
歌恋の身体がふらつき、桶の落ちる音がした。
ドサッー
足元から崩れ落ち、膝をついた。
「あれ・・・、おかしいな…」
「何やってるの?」
桶が地面に落ちる音と鈍い音がしたのに気づいた家康が出てきた。
「大丈夫…ちょっとつまづいただけだから…」
「大丈夫じゃないでしょ。ここはいいから天幕で休んでなよ…」
「後で行くから。」
「うん・・・ありがとう…」
そう言って天幕に戻った。信長は朝早くから秀吉達と話しをするため天幕にはいなかった。
「よかった・・・、信長様いたら心配掛けちゃうし…」
しばらくすると家康がみにきてくれた。
「歌恋いる?」
「どうぞ。」
「最近体調の変化ない?」
「えっ?何で・・・?」
家康が気を使いながら聞いていく。
「んー夏でも無いのにちょっと食欲はないくらいかな・・・。」
「やっぱり・・・」
「ちゃんとあれ来てるの?」
「えっ?」
「月のモノだよ・・・。」
「あっ・・・そう言えば…」
ここに来てから約二月近く。ちゃんと来ていたはずのそれはここ三ヶ月近く来てない事を思い出した。
「やっぱり・・・」
「何が・・・?」
「まだ気づかないの?」
「多分、それ、懐妊してるよ。」
「えっ・・・、嘘でしょ?」