第9章 あなたの帰りを待っています
「佐助君!」
「どうして・・・?!」
「あっ、お話してませんでしたね。」
そう言って三成が説明しはじめた。
今回は顕如討伐の為に協定を一時的に結んだ事。
隣に春日山城の野営地を作り、怪我人はまとめて家康が中心に手当てする事。
なので、救護所なるものを両陣営のあいだに独立したものを作った事を教えてくれた。
「炊き出しはどうするの?…」
ふと、そこが心配になった歌恋。
「それは各陣営で行いますから、歌恋様は安土の陣営側の炊き出しを手伝って頂ければ大丈夫ですよ。」
「よかった。」
三成の話が終わる頃に信玄が歌恋に近づいてきた。
「おぉ、良く見るとまるで天女の様な女子がいるではないか!安土の面々でよく見えなかったが美しい・・・」
(えっ?何?何でいきなり口説いてきたの…この人?)
そう心でつぶやきながら少しずつ後ずさりしていく。
「お嬢さん、こんな所にいないで我が陣営にこないかい?」
「えっ・・・」
思わず固まる歌恋…
すると後ろからぐっと引き寄せられ、気づくと信長の腕の中に閉じ込めるような形になっていた。
「甲斐の虎め、俺の歌恋に正面から口説くとはいい度胸してる。今すぐにでもお前を斬ってやる!」
「のっ、信長様・・・それは・・・!」
慌てて信長の方を見つめ、止めようとする。
「信玄様、ここは安土の野営地。それに歌恋さんは見ての通り信長様の寵愛を受けてる女性ですよ。こんな所で、いがみ合うのはやめてください。」
「そうですよ。信玄様。今回は顕如討伐の為に来たんですから、本筋を変えないでください。」
佐助と幸村で信玄を説得し、なんとかその場はおさまった。