第6章 あなたの手を離さない~信長√
「泣くな…歌恋」
口調はいつもと変わらないのに、夕日に照らされたからなのか、それとも…信長の顔が赤らんでるように見えた。
「のぶ…なが…さ…ま」
「その涙の理由は何故だ?」
「お前は現代に帰りたいのか?」
「えっ?どうしてそれを…」
「やはりな。あの時聞こえてきたのは本当なのか。」
「あの時の?」
(誰か来るかも…って言って佐助君は戻っていったけどあの後誰も来なかったのに…)
「信長様…私は…」
「お前はこのままここにいたければ入ればよい。」
「えっ?」
「お前が熱で倒れたと聞いた時、500年後の世界に帰りいなくなるかもしれないと聞いただけで俺は今までに感じた事のない感情が出てきた。」
「お前の声を聞いてると心が安らぐ、無邪気にはしゃぐ姿、大名の娘のように礼儀正しく振る舞う姿、光秀に揶揄われて真っ赤になって怒る姿、どれをとっても俺には今は無くしたくないものだ…」
歌恋の目から涙がとめどなく溢れてくる。
「うぅっ。」
「だからお前が俺には必要だ。買ってに帰ろうとするなど許さん。」
そう言った瞬間信長がきつく歌恋を胸に抱きとめた。
「信長…様…。私は…現代には帰りません!」
「だって、信長様の傍にこれからもずっと居たくなってしまったんですもん…」
涙を目にいっぱい浮かべ、それでも精一杯笑顔で信長を見つめながら言った。
「これからも信長様の側にいてもいいですか?」
「もちろんだ…」
顔を両手で抑え、しっかりとお互いの目を見つめてから再度口付けをかわした。
「んっ…ん…っ…」
「あっ…」
歌恋はしっかりと信長の首に手を回し、信長もそれに応えるように角度を変えながらさらに深く口付けを交わした。
「このまま本当はお前を褥に連れていきたいところだが、政宗達が宴の準備をして待っている。この続きは宴が終わったらにするとしよう」
そう言いながらニヤっと、笑い「行くぞ歌恋」と言って安土城へと足を向け歩き出した。
「っ///信長様待って下さい!」
両思いに慣れた事は嬉しいが、このまま何事もなかったかのように振る舞えるか…この先のことを考えると中々心臓のドキドキは止まらなかった。