第6章 あなたの手を離さない~信長√
「わぁーすごい人…!」
久しぶりに外に出てきて最初は戸惑っていた歌恋も、少しずつ慣れてきたのか、あたりをキョロキョロ見回し子どものようにはしゃいでいた。
「あっ信長様!あそこのお店に寄ってもいいですか?」
「どうした。」
ふと歌恋が指さしたのは簪や耳飾りなどの小物が置いてあるお店だった。
「構わん。今日はお前の快気祝いも兼ねている。」
「ありがとうございます!」
歌恋がふわっと笑顔になり、信長はまたドキッとした。
「これはたまらんな…このままでは…」
歌恋の一瞬一瞬のすべてに対して愛おしいと言う気持ちが溢れてきてどうしようもなかった。
「可愛い…」
それは蝶と花の飾りがついた簪だった。
「いらっしゃいませ。それは最近入ってきたもので、作った職人もかなりの出来だって言っているものなのですよ。」
「そうなんですね。」
(これ信長様に頂いた着物に合いそうだな…)
(でも、もっているお金だと買えないないからもう少しお針子の仕事頑張ったらにしよう…)
信長は歌恋が一瞬寂しそうな顔をしてその簪を置こうとしたのを見逃さずに「これ貰うぞ」と後ろから店主に声を掛けた。
「えっ?信長様?大丈夫ですよ!私自分で買いますから。」
「これはこれは…信長様。いらっしゃるとは思わず…」
店主が恭しく挨拶する。
「構わん。これを貰うとする。」
それと一緒に蝶の耳飾りも合わせて信長は買った。
「ありがとうございます。いま付けて行かれますか?」
「えっ…」
「そうしてやってくれ」
「かしこまりました。」
「あの…信長…様?」
「どうした。アレが欲しかったのだろう…」
「そうですけど、、、買ってもらう理由何てないのに…」
「言ったはずだ、今日はお前の快気祝いを兼ねていると。」
信長はあえてそこを理由にしているが、その簪を付けている姿を見てみたかった…というのが一番大きかった。