第6章 あなたの手を離さない~信長√
〈信長視点〉
秀吉から『歌恋が城下に行きたがってる様です。家康曰く長い時間じゃなければ大丈夫の様です。』と話があったのは3日程前のこと。
特に差し迫った政務もない。
熱を出し目を覚ましてから10日近く外へ出ていない歌恋。
お針子の仕事で得た小遣いを元に反物を買ってきたり、小物を買ってきて嬉しそうに話していた姿を思い出し、今日のことを決めた。
そして、出かけることを伝え、着替えてきた歌恋を見て一瞬時が止まったように感じた。
結った髪から見えるうなじ、この時期に合わせた色合いの小袖。
紅をさした唇は色っぽく、一気に女らしさを醸し出していた。
(何故あんなに色っぽいのだ…。あの唇に触れてみたくなったではないか…)
信長は心の中でそんな事を思ったが、出来るだけ平然を装うとしていた。