第5章 迫り来る時とあなたの手を離したくない……
歌恋が刺繍のデザインを描いていると天井からコンコンと2回音がした。
「大丈夫だよ」
天井から2回音がしたら佐助が来た時の合図。
基本的にタイミングは悪くは無いが、着替えていたりする事もあるからと合図をしてから入るようになった。
「やあ久しぶりだね。歌恋さん。なかなか顔を出せなくて申し訳ない。」
「ううん。佐助くんも謙信様の政務の補佐とかあるんでしょ?」
「春日山を離れてあちこちに行ってたから連絡も出来なくて申し訳ない。」
「今日は君に大事な話があって来たんだ。」
「大事な話?」
「ワームホールがあと一月もしないで力が最大になる。」
「うん。。。」
いきなりの話題に一瞬戸惑うも、それだけ事が重大だと痛感するのは話を聞き終わってからだった、
「ワームホールの力が最大になることによって俺と歌恋さんは戦国時代にタイムスリップすることになったのは前にも説明したね。」
「うん。」
「ある一定の周期でそのワームホールの力が最大になるのが最近わかったんだ。次のタイミングがさっき言った一月後。恐らくこれが最初で最後のタイミングになると思う。」
「このタイミングを逃したらもう現代に戻ることはできない。歌恋さん、君はどうする?」
「えっ?」
「現代に戻るんだよね?」
「うん…」
「まさか?戻らないのかい?」
(そうだ…色々ありすぎて忘れてたけど…。)
佐助くんには最初の頃に“ワームホールの力が最大になったら現代に戻ることが出来る。それまでは強い武将の側で守ってもらうように”言われてたっけ…。