第1章 久しぶりの京都とワームホールの出現。
佐助と話をした日から3日後。
「あれー、カメラに付けてたお気に入りのくまたんのぬいぐるみのストラップがない!」
明日から急遽入った仕事でカメラを使うことになり、準備をしていた。その際、カメラにつけていたストラップが無いことに気づき部屋を探し回っていた。
「最後に使ったのは…っ!」
「そうだ、あそこだ!」
歌恋はあの本能寺跡で落としたのでは無いかと思い、雨が降りしきる中、カメラが入ってるバッグとスマホ、財布をもって家を飛び出した。
(どうしよう…あのくまたんのストラップは大事な思いでのものなのに…落とすなんて!)
くまたんのストラップは、両親が事故に巻き込まれたあの日にお土産として買ってきたもの。
小さい頃からくまのぬいぐるみがお気に入りで、それと似たようなものを見つけると必ず買って帰ってきてくれた。
ゴロゴロ、ドッカーン――
梅雨に入りほとんど雨が降らずにいたが、久しぶりにまとまった雨。そして雷。
ゴロゴロゴロゴロ…
バリバリバリ、ドッカーン
「きゃっ!」
恐らく近くで落ちた雷の音に耳を塞ぎ、その場でしゃがみこむ。
「あった!」
スマホのライトで辺りを照らすと、【本能寺跡】と書かれた石碑の近くにくまたんのストラップが置かれていた。
「よかった!しかも濡れてないし、汚れてない!」
無くさないようにと慌ててカメラにつけて、その場を去ろうとすると…
「えっ?佐助くん?」
「もしかして、歌恋さん?」