第4章 動き始めた気持ち、揺れる恋心~
家康と信長が休まずに馬を走らせ一刻近く。
ようやく安土城に付き、真っ先に歌恋の元へ2人とも向かった。
歌恋の部屋には秀吉が側に付き、額には水で濡らした布が置かれていた。
「お舘様?それに家康…!」
秀吉は驚き目を見開いた。まさかこんなに早く2人とも戻ってくるとは思ってもいなかった。
「秀吉さん、歌恋は…」
「 あぁ、」
そういって家康に歌恋の状態を話した。
熱の原因がこの暑さによるものなのか、なんらかの病なのかは判断つかず、とりあえず熱冷ましだけは飲ませて数刻。未だに熱が下がる気配もなく、身体は熱いままだった。
「ちょっと触るよ。」
熱で意識のない歌恋に声をかけ、手足などを触り確認していく。
「秀吉さん、歌恋が倒れたのってどれ位ですか?」
真剣な表情で診ている家康を秀吉は久しぶりに見たような気がした。
「女中達が気づいたのは昼餉の時間から少し経った頃らしい。すぐに俺に報せに来たからそんなに差は無いと思う…。」
秀吉が申し訳無さそな顔で歌恋を見ながらはなす。
一通り歌恋の身体を診て、ふと息を短く吐く。
「多分、医師の言うことには変わりないです。額だけじゃなくて手足の関節とかもとにかく冷やして早く体温を下げた方がいいです。」
(手足の冷たさは無いからこれ以上は熱は上がらないと思う…、この前調合した薬の方が熱冷ましには効果あるかもしれない…。)
内心、家康は秀吉がそばについていながら『何やってるんですか…。』と思ったが、歌恋が来たばかりの頃足に結構深い傷を負っていても言わなかったことを思い出し、1人で納得していた。。
(早く良くなりなよね。みんな…あんたのこと心配でどうかしちゃってるんだから…)
額の布を再度水で濡らし乗せた。