第25章 いつもの日常と不気味な影~愛する人は側に~
それからすぐに家康は秀吉に呼ばれ、慌てて天主へ向かった。
「家康!大変だ!歌恋が産気づいたらしい!」
「はっ?だって予定までまだ日数ありますよ?」
「とにかくいいから、早く天主へいけ。今にも産まれそうらしいんだ。」
歌恋の出産予定は6月の終わり。
約ひと月近く早めに来たことになる。少し不安になるもとにかく状態を見ないことには・・・と平然を装って天主に入っていた。
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歌恋が産気づいてから数刻。日付が変わり、陽が昇り、子ども達も起き、手を握り必死に応援していた。
「お母様!頑張って!」
「おかあ様、頑張れ!」
「母上、頑張れ!」
「歌恋、あと少しだ。」
必死に信長も背中をさすりながら励まし続け・・・
『あぁーーーーーーーーー!』
「もうすぐ産まれるよ。あとちょっと頑張って。」
最後の力を振り絞るように歌恋が声をあげると・・・
『オギャー、オギャー、オギャー』
「産まれたぞ!」
この時期にしては珍しく二日続けて天気がよく、春のような心地よい陽気のその日、織田家にまた1人家族が増えた。
何の因果か、その日は歌恋と信長が出会った日だった。
「いらっしゃい、これからよろしくね。」
舞桜「可愛い!」
天音「小さいね・・・」
結人「ほんとだね!」
「よく頑張ったな。そしてありがとう。」
「信長様・・・。」