第25章 いつもの日常と不気味な影~愛する人は側に~
ひと月ほど早く産まれた割に、舞桜の時とさほど変わらない大きさで、しっかりと安土城中にその泣き声で存在を示したその子どもは
【時陽(ときはる)】
と名付けられた。
時を選んで産まれてきたこと、太陽のように周りを明るくてらして欲しいという願いを込めて・・・。
本当は『時春』と付けようとしたが、時期的にも春の字が合わないだろうとなり、さらに三月に秀吉のところに産まれた女の子が「春姫」と名付けられたため字を変えることにした。
そして時陽が産まれる本の数ヶ月前。
千姫のところにも男の子が産まれていた。
それを信長達が知るのはまだ先の事。
時陽の存在が千姫をまた狂わせる事になるとは誰もその時は知る由もなく、安土城ではその日歌恋の出産祝の宴が開かれ、次男の誕生は瞬く間に安土中、日ノ本に伝わったのだった。
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「何?信長の所も男の赤子が産まれただと・・・?」
「はい、安土の城下はそれでもちきりでした。」
「まぁ良い。私にはこの子がいればもうあの者達などどうでも良い。」
「そうだよ千姫。孝吉(たかよし)のことを今は1番に考えよう。」
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