第25章 いつもの日常と不気味な影~愛する人は側に~
「光秀、貴様はそのまま千姫の動向をさぐれ、三成は春日山城の軍神との連絡を取れ、姉の動向も佐助に探るよう文を書く。」
「政宗、秀吉、お前達はいつ戦になってもいいように準備をしておけ。」
「家康、貴様は千姫が使っている毒を徹底的に調べておけ。必要ならば牢にいる薬師を調べても構わん」
「皆心してかかるが良い。以上だ。」
信長以外の武将達が一斉に頭を下げ、姿勢を但して
「はっ。」
短く返事をした。
その返事を聞くと羽織りを翻し、信長は広間を後にし、天主へと向かった。
軍議があることは知っていたが『軍議=戦がある』と考えている歌恋を安心させるため。
つわりは落ち着いたが、千姫の一件以来あまり無理はさせないようにしていた。
家康からも・・・
『今回のお産はかなり危険なものになるかもしれ無い、出来るだけ安静にして体力温存させておいた方が・・・』
千姫の所在を掴めたのはほんの三ヶ月前のこと。
光秀が探らせていた者から裏が取れ、しばらく様子を見ていると京で祝言を挙げ、公家出身の者と夫婦になっていた。
しかも、春日山に姉が居ることもそこで知ることに。
佐助に先に探らせていると、どうやら軍神に接触しようとしていると・・・。
なんとしでても敵は取りたい。
愛する者を傷つけた事にこれだけの思いが湧くとは・・・
(ふん、俺も人間臭くなったもんだな・・・)
そんな事を思いながら天主へと向かう足取りは、思いのほか軽かった。