第25章 いつもの日常と不気味な影~愛する人は側に~
歌恋の懐妊が分かってからひと月も経たない頃に政宗が安土城へとやってきた。
比較的つわりは軽めとは言え、中々食事を取れない歌恋の身体を案じてた頃。
女中達があれこれと作るもあまり喉を通らない事に心配していた矢先のため、家康、信長、歌恋、女中、強いては秀吉や光秀、三成まで政宗の登城に一安心したのだった。
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「よー歌恋、お前また子ども身ごもったらしいな!」
「えっ、政宗?!」
天音「まさむねだー!」
結人「まさむね!」
双子が雪遊びをしているのを部屋のなかから見ていた歌恋に思わぬ人物が声を掛けてきた。
それからしばらく双子と雪だるまや雪遊びに付き合い、湯浴みさせ昼寝している時に合わせて政宗が食べやすいようにと煮麺を用意してきた。
「ほら、食えよ。最近まともに食べてないんだろ?女中達が嘆いてたぞ。」
「ありがとう!頂きます。」
クタクタに煮えたその煮麺はあっさりした味わいで、お椀によそられた分をしっかりと食べた。
「美味しかった…!ありがとう政宗。でもどうして政宗が・・・?」
「あー、信長様に呼ばれてな。しばらくまたこっちにいることになる。また作ってやるから。」
「うん、ありがとう。」
政宗が呼ばれたのは歌恋にも関係ある事、だが、今は大事な時期。あえてその事は伏せられていた。
次の日、政宗も揃った所で軍議が行われ、光秀から安土勢にとっては許し難い相手の名前が出てきた。
「まさか、千姫が公家出身のものと夫婦になっていたとはな・・・」
秀吉が光秀の報告を聞き一つ大きなため息をついた。
「しかも千姫に姉がいて、その姉が春日山城近くに居たとはこれもまた面倒な状況ですね・・・」
家康が眉間に皺を寄せボソッと、呟くと・・・
「何にせよ、千姫は必ず捕まえここ安土城に連れてくる。」
その重たい空気を一心するように上座に座っていた信長が鉄扇をとじ、立ち上がり武将達の士気を高めた。
(必ず捕まえ、一生安土の牢の中で俺の天下布武を見届けるがいい。)