第25章 いつもの日常と不気味な影~愛する人は側に~
《信長目線》
家康の診察が終わる頃に信長も秀吉の使いから知らせを受け大急ぎで戻ってきた。
「何?歌恋が倒れただと?」
「はい、秀吉様より早急にお戻りいただきたいとの・・・」
「分かった、光秀、あとは任せた。」
「御意」
乗ってきた馬で急ぎ安土城へと向かう。
(歌恋・・・、無事でいてくれ・・・)
かなり馬を飛ばし予定よりも早く着くことが出来、天主へと向かう。
城の入口で秀吉が待ち、状況を説明するもそんな事は耳に入らず一目散に歌恋の元へ・・・
診察が終わり出てきた所で、家康に聞くも自分で確かめろとはぐらかす。
顔を見る限りそこまで重病では無さそうだ・・・
ベッドに横たわり、しっかりと意識はあるようだった。
ホッとしたのもつかの間、倒れた理由をきくと・・・
『また一つ宝物を授けてくださいました。』
お腹に手を当て、穏やかな顔で言うその姿はまさに天女とも思える程に美しかった・・・。
(まさか・・・?!)
俺は言葉を発する前に気がつくと思い切り抱きしめていた。
子どもが好きな歌恋がもう1人欲しいと思っているのは知っていた。
『結人に弟が出来ればいいな・・・』
そう呟いていたのを。
夏前は特に月のものがくるとがっかりした顔をしていた事も・・・
その気持ちに応えてやりたかったが、こればかりは天からの回りもの。
ましてや千姫に毒をもられ一度は生死の境をさまよった身体・・・。
無理はさせたくなかった。
だが、そんな思いも歌恋の嬉しそうな顔を見て一瞬で吹き飛んだ・・・