第3章 武将達のそれぞれの思い…と久しぶりの再会
家康の手当てが終わったあと、お針子の部屋に案内され、様々な説明を受けた。
歌恋は信長にできたら見せにこいと言われていたが、スグに出来るものが思い浮かばず悩んでいた。
ひとまずお針子達が武将達の着物や羽織のホツレや破れた所を直しているのを見て、手伝うことにした。
ふと目線を横にやるとある1枚の羽織が目に止まった。
「この羽織は誰のですか?」お針子に聞いてみた。
一際目立つ黒地の羽織。
たかが羽織だが、主の威厳をそのまま表すかのような存在感。
黒の漆のお盆のような箱に入れられては居るが手をつけてる様子は無い。
「信長様の羽織なのですが、刺繍の所が破けてしまったり、裾ももう少し上げたりとかでどうしても時間がかかるものなのですが…」
戦が終わるとお針子達いわく、仕事がどっと増えると聞いた。
そのため、時間のかかるものは後回しにされ、簡単な作業のものをとにかく捌いて、落ち着いた頃に時間のかかるものは手をつけていくとお針子達は話してくれた。
「これ、私に任せて貰えませんか?」
お針子達に自分がやりたいと申し出る。
「えっ、でもこれは時間のかかるものですし、それなりに腕のたつもので無いと直せ無い難しいですよ?」
心配そうにお針子の1人が見つめ話した。
「丈をなおして、刺繍を違和感無いようにすればいいんですよね?あと細かい所を直したり」
「はい…、でも…」
「信長様に、何か作って持ってこいと言われているんですけど、すぐに思いつくものがないし、この位なら祖父母の家でやっていたので大丈夫だと、思います!」
そう言って信長の羽織を手に取り、道具を借り直し始めた。