第22章 歴史は繋がれていく~新しい生命と日常~
それから少しずつ歌恋の身体は良くなり、桃の節句の時には随分と身体を起こしていられるようになり、天主の隣の部屋に毎年恒例のお雛様を飾ってあった。
「お母様、見てー!綺麗だね~!」
「おひなさま、きれー!」
「天音、触ってはダメよ。見るだけね。」
「はぁーい!」
子ども達は毎年飾られるひな壇飾りに食い入るように見ていた。
「毎年見てますけど、本当立派なお雛様ですね」
「当たり前だ。舞桜の為に特別に作らせたものだからな。そのうち天音の分も作らせる。」
歌恋は信長にもたれ掛かりながら子ども達がはしゃぐ姿を見つめていた。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
歌恋が倒れてからもうすぐ三月。未だに神月家の居所は掴めて無かった。
紅を売った行商人はその後すぐに捕まり、誰の差し金か問い詰めた所、神月家の女で、たいてい武将の誰かしらと一緒にいるはずだからその連れの女で名前が『歌恋』って言ってたらそれを売るようにと言われたと。
ただ、神月家が使っていた屋敷は今は宿屋に変わり、前の家主達の居所は宿屋の者も知らないと言われ手詰まりだった。
その夜ー
信長「まだ神月家のあの女は見つかんのか?」
光秀「安土の縁のある所はしらみつぶしに探しましたが、隠れている様子もありませんでした。」
三成「神月家の遠縁に当たる家のものに聞いたところ、安土を出たのではと。文が届き、屋敷を売り払いしばらく留守にすると。」
政宗「そうなったら探しようがないな・・・」
三成「えぇ。」
家康「また狙ってくるかもしれないし。そうなる前に何とかしないと。」
秀吉「あの姫は何するかわかったもんじゃないからな。」
信長「とにかく、神月家の行方を探し出しここへ連れてくるのだ。」
(2度と歌恋に手出しはさせぬ。)
神月家の行方は結局その年の秋、京のとある屋敷に神月家の人間らしきものがいると分かり、父親だけ安土へと連れてきた。