第22章 歴史は繋がれていく~新しい生命と日常~
(この話は歌恋には聞かせてはならん。)
信長はそう考えていた。
天主へと戻ると歌恋が子ども達と湯浴みから戻った所だった。
「お父様ー!」
「とーしゃま!」
「ちちうえー」
「おかえりなさいませ。」
「あぁ、今戻った。」
子ども達と妻が迎えてくれるこの光景が信長は何よりも好きだった。
自分が家族と穏やかな時を過ごす経験などしてこなかった。
だからこそこうやって、子ども達や妻と過ごすこの時間の温かみを教えてくれた歌恋には感謝していた。
「何かありました?」
歌恋が信長の顔を伺う。
「何がだ。」
「だって、信長様・・・難しい顔なさってましたよ?」
「そうか・・・」
信長は胡坐をかき遠くを見つめる。
「そういう顔する時は何か考えている時ですよね…。」
(やはり歌恋はお見通しか・・・)
「明日城下にでも出かけてこい。子ども達は三成達に頼んである。」
「どうしたんですか?急に・・・。」
「たまには一人でゆっくりするのもいいだろう。」
信長はそれ以上言わなかった。
歌恋も察してそれ以上は聞き出そうとしなかった。
「お父様ー!今度馬にまた乗せて!」
舞桜が信長の膝の上に座り、双子も両側から信長に絡みつき、歌恋はその様子を 見守った。