第22章 歴史は繋がれていく~新しい生命と日常~
舞桜の誕生日から少しして早めの信長の誕生日を祝う宴が開かれた。
〈信長視点〉
上座に座り肘掛に身体をもたれ掛かり、酒を飲む。
隣には愛しい妻と先日2歳になったばかりの娘。
こうやって愛するものに囲まれて呑む酒は格別に美味い。
安土城城主の誕生日となれば諸大名などが祝いを言いに来るために貢ぎ品をもってひっきりなしに訪れる。
身重の妻にそれは酷な話。
これだけ妻を愛してやまない俺に家老達は側室をとるようにと計らう事もしばしばある。
『お世継ぎが産まれなければ側室を迎えて頂くこともお考えください。』
もうすぐ子も産まれる。それがもし女の子なら歌恋を悲しませる事になる。
例え男であってもこの乱世・・・。またしばらくすると同じような事を言ってくるだろう…
だからこそ気心知れた相手だけで宴を開く事にした。
家康曰く『いつ産まれてもおかしくないですから、些細な異変にも気づいてあげてくださいね。』
と。
双子となれば相当過酷なものだろう…。
「信長様・・・?」
歌恋が顔を除くように見つめてきた。
「どうなさったんですか…?なにか難しい事を考えているようなお顔をされてましたよ。」
優しく微笑みながらお酒をつぐ。
「いや、なんでもない。こうやって愛するもの達と過ごす誕生日もやはり悪くない。」
「そうですね。」
「と・・・しゃま?」
「どうした舞桜。」
「おめ・っ・と!」
はいっと言って、舞桜が差し出したのは小さな巾着に入った金平糖だった。