第19章 番外編~秀吉の恋模様~
いつもの奥の部屋ではなく、吉右衛門の屋敷の部屋へと通され、織田信長の晴れ着一式、秀吉、政宗、光秀、家康、三成の祝言用の着物が衣桁に掛けられていた。
その部屋には葉月が待っていたー
「秀吉様、お待ちしておりました。」
三指つき、頭を下げる葉月。
その周りにはそれぞれの着物が掛けられており、部屋の一番奥には信長の晴れ着が掛けられており、その出来は歌恋にも引けを取らない程の出来だった。
「さすがだな・・・。仕上がりも完璧だ。」
秀吉は自分の晴れ着を見てちょっとした違和感を感じた。
秀吉「これは・・・」
葉月「秀吉様の着物には他の武将の方々とは違う刺繍を施させて頂きました。」
葉月が着物のそばに行き、秀吉に見えやすいようにその箇所を手に取って見せた。
葉月「どうぞ手に取ってお確かめください。」
秀吉「あぁ。」
秀吉はおどきながらも、自分の着物の前に行き確かめた。
裾の方に牡丹の刺繍が施されていた。
牡丹の花言葉は「思いやり」
葉月「秀吉様は本当にお優しく、私の事も常に気遣って下さいました。そんな秀吉様への私からのささやかなお礼をさせていただきました。」
葉月の顔がほんのり赤みを帯びて居たのに秀吉は気づいていた、
秀吉「こんなにも良い物を仕立ててくれ感謝する・・・。きっとお館様もそう仰ると思う・・・。」
秀吉もこの4ヵ月、それなりの頻度で音羽屋に通い、葉月と会話を交わすようになっていた。
タダの店の娘と、客の関係だけでは無い感じにお互いなっていた…。
だけども、お互いにそれを口に出す事や態度に出すことは無かった…