第15章 叶わぬ思い~離れていてもあなたを愛しています~京都編②
お爺様が話を続けた。
本当は私の母に「歌恋」と付けようとしていた。
だけど、呉服屋の主人の娘なら舞花の方が良いとなり、私がその名前になったと。
「お前の父親は戦国時代、織田信長の研究を進めるうちに、身内しか知らないはずのこの言い伝えの存在をしり、我が家に残るその着物を見せて欲しいと頼んできたんだよ。」
「勿論、はじめは断った。あれは我が家の家宝とも言えるもの。見せるまでには一年以上通いつめて、ようやく私が折れたんだ。」
「その着物は今どこにあるの?」
その着物を見てみたくなった。500年以上の歴史がある着物。そして、信長様が愛した人に贈った着物。
その着物は今母の部屋に出されていると聞き、生まれて初めて母の育った部屋へと入った。
部屋に入ると、衣桁に掛けられた一枚の羽織と、畳に広げられた着物、帯があった。
その着物はまるで新品のような装いで、とても長い年月が経っているとは思わなかった。
「すごい・・・。これが・・・」
声にならなかった。あまりの美しさと荘厳な感じが・・・
お爺様がふと声を掛けてきた。
「そろそろ話してくれないか…、お腹の子どものこと。いなくなった半年間の事を・・・。」