第15章 叶わぬ思い~離れていてもあなたを愛しています~京都編②
戦国時代、織田信長が安土城を築き城下町が出来た。
うちの先祖は京都で大きな呉服屋を営んでいた。
織田信長が京都のお店を訪れその主人に「安土でもその店を出せないか」と言われ、今で言う支店のようなものを安土に出したと。
その店の主人は京都の店を結婚し独立した息子に任せ、安土に重きを置く ようになった。
その主人にはまだその時17の娘がいた。
娘も店の手伝いをしていた為か、裁縫が上手く、時々安土城に着物や羽織などを作って献上していた。
信長はその着物の出来をたいそう気に入り、自分の着るものはその店に頼むようになった。
ある日、娘が着物を献上しに行くと、信長がその娘に対し着物を作っている例だと言って花をいくつかあしらった櫛を贈った。
その後も信長はことある事に贈り物をし、ついには二人で安土城の庭を散歩するなどの仲になったと。
ある日信長はその娘に、「大切な人に贈る祝言用の着物と羽織、帯を仕立てて欲しい」と綺麗な紅色の地に花や鶴などが刺繍された豪華な反物を持ち頼んだ。
しかも珍しく日時まで指定してまで・・・
娘はその時信長に恋をしていたが、商人の娘と武将では身分違い・・・
きっぱりこれで諦めようと思いながら着物を仕上げた。
信長からはこれを持ってくる時はその店の主人、母親も一緒に来るようにと言われていた。
そして、その着物と、羽織、帯を持って安土城へ行くと、信長はその娘に会わずにその着物を着て見せに来るようにとだけ伝えた。
女中達に手伝われその着物に着替え、化粧を施すとそこには祝言用にと以前仕立てた着物を着た信長がいた。
そして、信長はその娘にこの着物はお前の為に反物から選び、お前自身のものだと。
信長はその娘とそのまま祝言を挙げた。
しばらくしてから二人の間に娘が産まれた。
その名は「歌恋」
母親の名は「舞花」
娘が祝言で着た着物は代々その時の娘に受け継がれて言った。
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これがこの家に代々伝わる言い伝え。
だからこの家の娘にはどちらかの名前をつけるようになったと・・・