第13章 叶わぬ思い~離れていてもあなたを愛しています~京都編
目を覚まし、祖父母がひとしきり泣いて落ち着いた頃、医師が来て診てくれた。
お腹の子どもの状態はここではわからないので、ちゃんと病院に来て調べてもらうように言われた。
「ありがとうございました…」
部屋の外でお爺様が病院の先生を見送る為に、廊下を歩いている声が聞こえた。
(そうだ、私妊娠してたんだ・・・。)
その先生の話しだと今は5ヶ月から6ヶ月に入るくらいだろうと。
どことなくお腹が膨らみ初めて来て、身体も前より変わってきてるように感じた。
病院の先生を見送り、祖父母が部屋に入ってくる。
「歌恋、入ってもいいかい?」
「どうぞ・・・」
おじい様が本当に心配そうに見つめながら入ってきた。
おばあ様も、私が大好きな温麺を持ってきてくれた。
「とにかく、これを食べなさい、身体が冷えてる時はこれが一番よ。」
その、温麺の香り、そして、いつも使っていた自分の箸、そして、温かい緑茶、どれも懐かしいものだった。
普段はおばあ様は料理はしない。お店が忙しいため、家の事はお手伝いさん達が住み込みで何人もいてその人達にお願いしていた。
だけど、私が風邪を引いて寝込むと、必ずと言っていいほど温麺を作って看病してくれた。
眠っている私の隣で着物の手直しや刺繍をしたりしながらだった。
「ありがとう。」
そう言って口にする温麺は温かくて、暖かくて、祖母の思いがたくさん詰まっているように感じた…。
「美味しい。温かいね・・・」
食べ終わる頃には今まで止まっていた涙が溢れ出てきた…