第11章 叶わぬ思い~離れていてもあなたを愛しています~安土編
朝、意識が飛んで少し眠ってしまった事に気づいた歌恋。
今日はこの着物を着ようと決めて居たそれは、初めて信長とデートした日に贈られた反物で作ったものだった。
もし、向こうに戻され、記憶を失ってもなにかを持っていれば思い出せるようにと。
佐助か
「もし、向こうに戻されたら記憶を失う可能性もある。俺も1度向こうに戻された時に一時失っていた…」
「だけど、謙信様に頂いたこの短刀があることで思い出せたんだ・・・だから、なにか持って居たら思い出せるかもしれない。」
そう言われて、いつか信長に見せようと思っていたその着物を着付け、大広間に向かった。
「おはようございます…」
「おっやっと起きてきたな、寝坊助」
光秀がいつもの調子でからかう。
「寝坊助って・・・。いつもより早く起きてます!」
「あっ・・・、あーまた光秀さんに!」
そういうと、笑いが零れた。
「その方が良い。お前はいつ、何時でもそうやって笑っていろ。」
「はい・・・。」
光秀の優しさに嬉し涙がこぼれた。
ふと外に目をやると昨日とはうって変わり、不気味などんよりした空模様だった。
「歌恋起きたのか…」
どこかへ行っていたのか、部屋にはいなかった信長が広間に入ってくる。
「信長様・・・。」
「その着物は・・・」
信長が着物に気づき一瞬言葉を失った。
「初めて信長と城下に出かけた時に下さった反物で作りました…。」
「お見せする機会が無くて、今日はこれを着ようと前から決めていたんです…」
「そうか・・・」
ほんの僅かに沈黙が流れるもそれを打ち切るように三成が口を開いた。
三成「さっ、朝餉にしましょう。政宗様が今朝は作って下さったんですよ。」
「そうなの?」
政宗「あぁ、昨日城下に行ったらいい食材があったからな。」
そして、そのまま朝餉の時間は平和に過ぎた。
一旦はそれぞれ部屋に戻り残った仕事などをしたりしながら昼餉の時間が近くなった頃、この時期にしては珍しく雷が鳴り出した。
ーゴロゴロゴロ・・・
「きゃっ、」
思わず耳を塞ぎその場にしゃがみ込んだ。
「ついに来たか…」
佐助が眉間に皺をよせ、空を見上げる。
「歌恋…俺から離れるでないぞ。」
信長が自分の腕の中に閉じ込める。