第11章 叶わぬ思い~離れていてもあなたを愛しています~安土編
その夜。信長が佐助と話しを終え天守閣に戻ってくる。
(いよいよ明日か・・・)
信長の顔にも緊張が走る・・・。
(歌恋は 何をしてるのだ。佐助と明日の事で話をしていたら過ごす時間が減ってしまった・・・。)
「よし、出来た!」
「何をしているのだ。」
「信長様・・・!」
「何をしてるのだと聞いているのだが…」
「そ、それは・・・みんなに文を書いていたのです。」
「文?なぜそのような物を。まさか歌恋、未来に帰る気になったのか・・・?」
「ち、違います!もし、私になにかあったらみんなにちゃんと話し出来ないままだと思ったので…」
「そのようなことを・・・」
「あの・・・、信長様?」
「なんだ?」
「お願いがあるのですけど…。」
「願い?」
「はい。」
そういうと、姿勢を正して信長に向かい目を見て、話し出した。
「もし、私が未来に戻って、ここに帰って来ることが出来なかったら私とこの子を愛していた事を未来に分かるように残して欲しいんです。」
「もし、向こうに行って記憶を無くしてしまったら思い出せるように・・・。」
「未来に戻って、ここに戻って来れなかったら私は1人でこの子をちゃんと育て上げます。この子が大人になった時に『あなたは愛されて産まれてきた子』なんだと・・・」
「だから、私が信長様に愛されていた証を残してください。私も信長様に愛されていた事を未来に残すためにこうやって文を書いたんです。」
「歌恋・・・。分かった…、だがお前がどこにも行かなくても俺はお前を愛した事を未来永劫残るようにしよう・・・」
「ありがとうございます…。」
涙を目にいっぱい浮かべながらも必死に笑顔を作ろうとする。
そんな姿にいたたまれなくなり信長が強く抱き締め腕の中に閉じ込めた。