第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
「いらっしゃいませ!」
店に入るとすぐに、元気な挨拶が飛んできた。
お宿の主人とは大違いである。
高めで聞き取りやすい声の主は、受付に座って店番をしている女の子。
歳は私とそう変わらないかな?
店内はそう広くはなく、並んである商品を見て回るというよりかは、薬局のようにどんなのが欲しいのか店員さんと話して出してもらうといったスタイルのようだった。
「なにをお探しですか?」
特にお目当てのものがなく、ウィンドウショッピングをしようと思っていた私は答えに詰まってしまう。
「えっと……お話しませんか?」
「お話?」
咄嗟に出てきた言葉の割には、なかなかいいアイディアに思えた。
「昨日来たばかりだけど、ここはのどかで素敵だね。なんだか時間がゆっくり流れてるみたい」
「……ありがとう。でもこんな田舎、ずっと居たら退屈なだけよ? わたしは城下町のほうがずっと素敵だと思うの…………ねぇもしかして、あなた城下町から来たんじゃない?」
女の子はハニカムように笑ってから、私の方を興味津々というように見てきた。
「えっと……そう、かな?」
城下町というかお城から、という方が正しいけど、正直に話すわけにもいかない。
曖昧に頷くと、女の子はカウンターから身を乗り出して目を輝かせた。
「わぁ、本当!? アレクサンドリアの城下町から来たの? もしかしてリンドブルム?」
私がアレクサンドリアと答えると、女の子はさらに目を輝かせた。
「わたし、もう十六になるのにこの村から出たことがなくて……いいなぁ、羨ましいなぁ」