第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
それからも女の子と色々話に花を咲かせていると、何やら村の男の子が店にやって来たので私はおいとますることにした。
風車を見たり、看板の出ている他のお店に入ってみたり、色々見て回っていると村の端っこまでやって来てしまったみたいだ。
『あっという間に村を見終わってしまったわね』
目の前にはこじんまりとした畑があるが、その向こう側は一面草原が続くばかり。
正真正銘、村の一番端っこ。
『草原になにか描かれているけど……あれはなにかしら?』
ここからでは見えにくいけど確かに、緑一面の草っ原に白線で図形のようなものが描かれている。
うーん、なんだろう。
私には見当すらつかない。
諦めて畑に視線を移して、後ろからしわがれた声に呼びかけられて驚く。
「なんだいあんた。じゃまだからどいとくれ」
『どいとくれ?』
「あっ、ごめんなさい」
「まったく、近頃の若いもんは!」
そうぶつくさ言いながら畑に入ってきたのは、茶色のバンダナをつけたおばあさんだった。
『レイナ、今のはどういった意味の言葉なの?』
ダガーは絶賛、普通の言葉覚え中だからか、おばあさんの荒い言葉遣いが気になるみたいだった。
どいとくれって言うのは、どいておくれ、どいて下さいって意味だよ、と私が説明するとダガーは感心するような声を上げていた。
なんかこんなことを丁寧に説明するなんて変な感じだ。
でも城住まいだったダガーからすれば、おばあさんの使う言葉は異国の言葉に聞こえるのかもしれない。
そんな事を考えている間に、おばあさんは畑に植わっている、私にはなんの種類かもわからないような野菜をいじりだした。