第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
寝室にも天窓が付いているようで、中央に設置された……井戸かな? の水面をオレンジ色に輝かせている。
この世界は室内でも土足らしく、ガーネット一行は靴のまま入室した。
アメリカン式だ、と思ったけど日本でもホテルでは土足のことが多いな、と私は思いなおす。
「寝る前に教えてほしいことがあるんだ。城を出てどこに行くつもりだったんだい?」
そうだ、ジタンにはまだリンドブルムに向かっているってこと、言ってなかったんだ。
「あのまま劇場艇が飛べば今頃は……」
「……となりの国のリンドブルムについていただろうけど……アレクサンドリア王国を出るつもりだったのか!」
確かに一国の姫君が国を越えた家出をするなんて驚きだろう。
ジタンが目を見開く。
「確かに、劇場艇にうまく隠れりゃ国境の南ゲートも楽々通りこせた……か。けど、こうなった今は……南ゲートは歩いて越えるしかない」
この世界の地理を大まかにしか把握していない私には、隣の国に行く大変さは彼らほどは分かっていないけど。
地球でも国を移動するときにはパスポートとか色々準備しなきゃいけないくらいだから、この世界でもそこそこ大変なんだろうくらには想像できる。
「う~ん、国境越え……か」
「ジタン、聞いて下さい」
唸るジタンに、ダガーが改まった言い方で話しかけた。
「どうしても、やらなければならないことがあるのです。理由はまだ言えないのですが。でも、どうか……」
今のダガーの心の内には一つ、大きく強い意思だけがある。
それは自分の母親を想う気持ち。アレクサンドリアを思う気持ち。
それらが一つに纏まったもの。
ダガーの決意は……これほどに強いものだったのか、と今さらながらに思った。
それをジタンも感じ取ったのか頷く。
「わかった……必ずリンドブルムまで送りとどけるよ」