第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
気づくと、身体の主導権が再び変わっていた。
今回は眠ったわけでも、意識を失ったわけでもない。
もはや立った状態で、ふとガーネットに主導権が移動した。
俯いていた顔が上がると、怪訝に思ったのか、皆が私に注目していた。
ジタンが代表して声をかけてくれる。
「ガーネット、本当に大丈夫なのか? さっきから突然ぼーっとしすぎだぜ? つらいなら無理せずそう言ってくれよ?」
「…………申し訳ありません、本当に大丈夫です。それで、わたくしの呼び名ですけれど……」
ガーネットがちらりと私のことを気にかけた。
反射的に、私は断りの文句を口にしていた。
『ごめん、やっぱり私の名前はやめよう』
『……でも』
『本当にごめんね、色々ごめん。でも、やっぱり私の名前にするのはダメだから……だから、ごめん』
『…………そうですか、レイナがそう言うのであれば……わかりました。別の名前を考えましょう』
『ありがとう、ガーネット』
そんな中、ジタンの手の中で光る物に視線が吸い寄せられる。
「……ジタン、それは何というのですか?」
ガーネットが尋ねると、ジタンは持っていた武器を見た。
「こいつかい? こいつはダガーっていうんだ」
「これはダガーというのですね……」
ジタンから受け取り、ダガーを太陽の光に透かす。
刃が光を反射して、ダガーの角度を変えるとその光が刃の上を滑っていく。
「姫さま! 小さくても武器、不用意に扱うと危険ですぞ!」
スタイナーの忠告もそこそこに、ガーネットはひとつ頷いた。
「決めました。わたくしはこれからダガーと名乗ります。これでどうかしら?」