第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
『うん、いいんじゃないかな』
お姫さまであるガーネットが武器の名前を付けるとは思わなかったけど、それでもガーネットが考えてくれた名前だ。
私が反対なんてするはずがない。
「本当にそれでいいのかい?」
ジタンの青い瞳がこちらを見つめてきた。
見つめられた、と思ったのは私だけかもしれない。
放たれた確認の言葉に性懲りもなく少し動揺してしまったから、その青い瞳に私の心まで見透かされているように錯覚してしまう。
それでも、もう決めたから。
私が決心を固めるために短く息をはいたタイミングで、ジタンは笑顔を浮かべた。
「よし、上等だぜダガー!」
彼がよく見せるにっとした笑み。
ガーネットにかけた笑顔なのに、自分が褒められたようで嬉しかった。
「あとはそのしゃべり方だな……オレみたいにさ、くだけた感じになれば文句なしだ」
確かにガーネットはお姫さまだからか、口調が少し固いよね。
私もガーネットっぽくお上品に話すの苦労したし。
ガーネットも口調を変えるのは大変なんじゃないかな?
よし、これなら私も役に立てるかも!
そう意気込んでいると、ガーネットが緊張気味に口を開いた。
「ええ、やってみます」
「違う違う……そこは……」
ジタンは一瞬ビビを見ると、再びこちらに視線を戻して一つ大きく頷く。
「“うん、がんばる”だな」
「……う、うん、がんばる!」
「その調子だぜ、ダガー!」
『私もできるだけ力になれるように頑張るね!』
『ありがとうございます、レイナ』
ガーネットのまだ固い口調にくすりと笑う。
「……ってことで、そろそろ行くか!」
そんなジタンのかけ声に、私達は崖を下りて村へと向かっていった。