第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
眩いほどの光が私達の顔を照らす。
「わぁ! 外だ!!」
はしゃいだようにビビが洞窟から駆け出すのを、私達も追いかける。
光の中に飛び込むと、すぐに太陽の日差しを直に感じて目を細める。
さっきまでの冷気の反動もあり、暖かい陽の光はとても心地よく感じた。
太陽を直接目にするのはいつぶりか。
一日か二日ぶりだと思うのに、ずいぶんと恋しいような気がする。
『やっと“霧”の上に出られましたね! やっぱり青空の下が一番です!』
ガーネットの声もどこか弾んでいて嬉しそう。
空を見上げると、澄み渡る青が広がっている。
うん、霧の上に出れてよかった。
「おっ、あそこに村があるぜ」
目ざとく見つけたのか、ジタンの指さす先を見るとアレクサンドリアみたいなお城はないけど、たしかに原っぱをずっと行った所に村がある。
あれがモイスの言ってた村かな。
「な〜んかあの村って、前に見たことあるような気が……」
そう言って、ジタンは記憶を探るように首を捻る。
『ジタンはいろんな所に行ったことがあるんですね……わたくしが知っている世界は、すべて書物の中のことばかりですわ』
しょんぼりと肩を落とす姿が目に浮かぶほど、ガーネットの呟いた声は寂しそうだ。
うーん、ガーネットはお姫さまだもんなあ。
ガーネットの受け売りだけど、それこそこれから知っていけばいいんじゃないかな。
私が彼女にそう語りかけると、ガーネットは嬉しそうに笑ってくれた。
「ジタンが知っている村かもしれませんよ。とにかく行ってみましょう」
「おいおい、ちょっと待てよ!」
さっそく村へ向かおうと、高台から下へと続く坂を下りようとする私を、ジタンが呼び止めた。
「ガーネットはお姫さまなんだぜ? それってどういうことかわかってんの?」
眉を上げ、こちらを見下げてくるジタンは少し呆れ顔。
えっと、つまりはどういうことだろう。
「今だって追っ手が来てるかもしれないし、姫だってことがバレたらいろいろ面倒だぜ」
そっか。
確かに、誘拐中のお姫さまがひょっこり現れたら騒ぎになるかも。