第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
滝を越えて、流れる川を越えて、私達は氷でできた坂を上っていく。
「もうちょっとで外にでれると思うんだけどな……」
そうぼやくジタンの後を、私はついていっている。
頭にできた大きなたんこぶをさすりながら。
頭上でぷくっと大きく膨らむそれは、言うまでもなくさきほどの転倒でできたもの。
それを、私が、さする。
はぁ、と息を吐いた。
ガーネット、いくらなんでも何もない所で転ぶのはどうかと思うよ。
私がそう心の中で呟くと、不本意そうな声が返ってきた。
『身体を動かすのは久しぶりで、少し足がもつれてしまったのです』
ふん、と言葉尻で息を吐くあたり、彼女も頭にできたコブの痛さを気にしているのだろう。
数十分前、結局目が覚めると身体の主導権は再び私に戻っていた。
なんでだろうね、頭を打った衝撃でまた入れ替わっちゃったのかな?
まあどういう仕組みになっているのか詳しいことはわからないけど、今坂を上ろうと足を動かしているのは私だ。
「お姫さま、頭まだ痛い?」
私が何度もため息をついていたからか、隣を歩くビビが心配そうに声をかけてくれた。
目線は私の頭上に注がれている。
自分では分からないけど、結構目立ってるのかな?
「まだ少し痛みますけど、大丈夫ですよ。それより、これ、目立ってますか?」
コブのあたりを指さすと、ビビは困り顔を浮かべる。
「うーんと……ちょっとだけ」
そっか……まあ、結構派手に転んだもんね……。
私も苦笑いを浮かべると、ジタンが振り返って、
「気になるほどじゃないぜ」
そんな言葉をかけてくれた。
すぐにそんな言葉が出てくるあたり、ジタンは女性への対応を心得ているのだなと思わざるをえない。
そんな会話を続けていると、目の前をぼんやりとした光が照らした。