第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
『え?』
今、口が勝手に動いた……?
ふいにどっぷりとした困惑の渦が巻き起こり、私の心はその感情に包まれる。
「なかなか起きないから心配したんだぜ?」
「お姫さま、もう大丈夫?」
『なんで?』
そう口にしようとしたのに、またしても言葉として外に出たのは違うものだった。
「…………ええ、大丈夫です」
混乱から抜けきれない間にも、私の身体は勝手に立ち上がり、三人の顔を見やる。
私に向けられる安心したような表情。
そんな彼らの表情を見ていても、私の心はちっとも落ち着かない。
『どういうこと? なにが起こってるの?』
口を開けども開けども、私の言葉が音になることはない。
やっぱりまだ混乱していると、ふと納得したような、安心するような気持ちが広がった。
いや、私は全く納得してないんだけども。
『レイナ、聞こえますか?』
ふいに聞こえてきたガーネットの声。
突然言葉も通じない外国に連れてこられたような心細い気持ちを抱いていた私は、ガーネットの声に少し安心する。
『ガーネット! うん、聞こえてるよ。ねえ、なんだか身体が言う事きかなくって。これって…………』
そう話していて、ピンっと思い当たってしまった。
えっ、もしかしてもしかして、これってもしかするんじゃないの?
ドキドキと高鳴る鼓動を肯定するように、ガーネットの声が響く。
『……ええ、今身体を動かしているのは、わたくしです』