第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
私は再び夢を見ているようだった。
着慣れた制服を身に纏い、木製の椅子に座って木製の机に腕を乗せている。
今は休み時間なのか、クラス中がガヤガヤと騒がしい。
そんな中、ふわりと私のすぐ側を、甘い香りと共に短いプリーツスカートが横切った。
「やだ、なにそれウケる」
なびいたスカートは男子生徒数人でできた輪の前で止まり、時折生まれる笑いにのってゆらゆらと揺らめく。
そんな彼らのことをしばらく見ていたからか、男子生徒の一人と目が合った。
数秒合わさって、
すぐに目の前の女に戻される。
私もそらすと周りに視線を巡らした。
すぐに見知った友人達を見つけて、ほっと息をつく。
立ち上がって声をかけるけど、話に夢中なのか気づいてくれない。
近くまでいって、再び呼びかけるけど誰も気づいてくれないので、一番近くにいた友人の肩を触ろうとして。
「えっ?」
私の手は、友人の身体をすり抜けた。
ふいに広がる暗闇。
吸い込まれ落ちていく身体を捻ると、なびく髪の隙間から、友人達の笑い声がぼんやりとした明るさを伴って見えたが。
それは急速に離れていって、やがて消えてなくなった。
内臓が浮くほどのスピードで落ちる感覚に、
乱暴に向かってくる風に、
ドクドクと心臓が打ち鳴る。
この感覚、知ってる。
ふいに溢れた光に飲み込まれ、意識が朦朧としてきて、
そして…………
思い出した。
私、もう死んでるんだっけ。
「────めさま、姫さま?」
身体を揺り動かされ、急激に現実へと引き戻された私は、横たわっていた氷の冷たさに驚く。
「……ガーネット?」
気づくと、見知った三人がこちらを覗き込んでいた。
……そっか私、今はガーネットなのか。
身体を起こそうと上半身に力を入れようとしたけど、なぜかうまくいかない。
焦る気持ちとは裏腹に、意外にもすんなり身体は起き上がって。
そして────
「皆さん……無事だったのですね」
私の意思とは関係なしに、口が、勝手に言葉をつむいだ。